④⑥⑧(ヨーロッパ)でも①①①(ピンピンピン)

経済評論家兼スフィアファンが好き勝手に書くこんなブログをわざわざ見てくれて本当にありがとうございます

経済評論家日記特別号(2021年2月2日)

今回は特別号としてミャンマーのクーデターについて。

まずは以下のニュース

ミャンマー国軍、閣僚11人任命 数百人拘束、スー・チー氏は自宅軟禁

 1日のクーデターで実権を握ったミャンマー国軍は2日未明までに、アウン・サン・スー・チー国家顧問兼外相ら24人を解任し、新たに11人を任命した。クーデターによる拘束者は、スー・チー氏率いる国民民主連盟(NLD)関係者ら数百人に及ぶもようだ。

 新たに任命された閣僚は国軍出身者が中心。国軍系テレビによると、スー・チー氏の後任の外相にはワナ・マウン・ルウィン氏が起用された。同氏も元軍人で、国軍系の連邦団結発展党(USDP)によるテイン・セイン政権(2011~16年)時代に外相を務めた。計画・財務・工業相に任命されたウィン・シェイン氏もテイン・セイン政権の財務相だった。

 NLD報道担当者によると、スー・チー氏とウィン・ミン大統領は、それぞれ首都ネピドーの自宅で軟禁されている。1日のクーデターでは、ネピドーにいたNLD議員やNLD出身の地方トップらが相次いで拘束された。1日には昨年11月の総選挙後初めてとなる議会が招集される予定で、議員らはネピドー入りしていた。

 また国軍に批判的だったジャーナリストも拘束されたもようだ。

2021.02.02 産経ニュース
 ミャンマー国軍、閣僚11人任命 数百人拘束、スー・チー氏は自宅軟禁 - 産経ニュース

ミャンマー国軍は1日に国家の実権を掌握したとして、1年間の非常事態宣言を発令した。

これは軍事クーデターによる民主政権の転覆で、国軍は事実上の政権トップ、アウン・サン・スー・チー国家顧問(75)を含む最大与党・国家民主連盟(NLD)幹部らを相次いで拘束した。スー・チー氏はNLDを通じて国民に抗議を呼びかけており、政情は緊迫している。

国軍のクーデターの理由は昨年11月の総選挙での不正に対して政権側が調査を拒んだため。

ミャンマー国内はクーデター後、通信状態が不安定となった。最大都市ヤンゴンで視聴できるテレビは国軍系の放送局の番組のみ。電話は不通。インターネット回線も不安定な状態。おそらく国軍による通信妨害とみられる。

とにかく言えることは、ミャンマー国内は経済や社会が一気に混乱しており、銀行では取り付け騒ぎとなり、市場やスーパーマーケットでは買い占めが発生していることと、民主化政権のアウン・サン・スー・チーと国軍が対立していたこと。

アウン・サン・スー・チーはMI6やCIAなど外国の諜報機関からお金をもらっていたというスキャンダルもあった。

それが事実であろうとなかろうと、一国の要職にある人間が外国の諜報機関からお金をもらって活動することや総選挙での不正疑惑に対して政権側が調査を拒んだことはいろんな理由があろうと問題ある事案であり、少なくともミャンマー国軍が怒ってアウン・サン・スー・チーの身柄を押さえる程度には十分な事案である。

 

それに対してのミャンマー国外の反応。

 

まずはアメリカ。 

米、ミャンマー制裁復活を検討 バイデン大統領「責任取らせる」

 バイデン米大統領は1日、ミャンマー国軍によるクーデターに関し声明を発表し、「米国は地域と世界のパートナー諸国らと一緒に(ミャンマーの)民主体制と法の支配の回復に向け取り組んでいく」と表明した上で、対ミャンマー制裁の復活を検討する考えを明らかにした。クーデターに関与した国軍当局者らに「責任を取らせる」とも表明した。

 バイデン氏は、歴代米政権が過去約10年間、ミャンマー民主化進展に合わせて制裁を段階的に解除してきたと指摘し、「(民主化の)進展に逆行する動きがあれば、米国の制裁関連の法令と権限を直ちに再検討する必要が出てくる。続いて適切な措置を取ることになる」と警告した。

 また、国軍によるクーデターは「民政移行と法の支配に対する直接の攻撃だ」と批判。「国際社会はビルマミャンマー)国軍に対し、即時の権力放棄と拘束した当局者や活動家の釈放、民間人に対する暴力の自制を一致して呼びかけるべきだ」と訴えた。

 さらに「民主体制では、軍隊が人々の民意を覆したり、公正で信頼に足る選挙結果の無効化を図ったりすることは決して許されない」とも語り、「米国は、いかなる場所であろうと民主主義が攻撃を受ければ立ち上がる」と強調した。

2021.02.02 産経ニュース

米、ミャンマー制裁復活を検討 バイデン大統領「責任取らせる」 - 産経ニュース

米圧力「解放求める」

 米国のブリンケン国務長官は1月31日に声明を出し、ミャンマー国軍に「全ての政府当局者と市民社会の指導者を解放し、昨年11月の民主的な選挙で示された人々の意思を尊重する」よう強く求めた。

 米バイデン政権は「こうした措置が取り消されなければ、責任を負うものに行動を起こす」(ジェン・サキ大統領報道官)と対抗措置も辞さない構えで、国軍に圧力をかけようとしている。

 2012年にオバマ氏が現職米大統領として初めてミャンマーを訪問するなど民主党政権ミャンマー民主化に密接に関与してきた。バイデン政権としても今後、経済制裁などを検討する可能性がある。国軍に対する圧力の枠組みを国際的に構築できるかどうかはバイデン大統領が唱える国際強調の資金石となりそうだ。英国も政府報道官が声明で、国軍を非難し、「不当に拘束された」スー・チー氏らの解放を求めた。

 一方、米国が制裁発動などの対応に出た場合、ミャンマーが「内政不干渉」を掲げる中国などへの接近を強める可能性がある。中国外務省の汪文斌(ワン・ウェンビン)副報道局長は1日の定例記者会見で、国軍とスー・チー氏の双方に「憲法と法の枠組みのもとで適切に対立を理解してほしい」と述べて国軍の非難を避けた。軍出身のタイのプラウィット・ウォンスワン副首相も、報道陣に「内政問題だ」と述べ、国軍のクーデターを強く非難する米国などと、立場の違いを鮮明にした。

 王毅(ワン・イー)国務委員兼外相は1月12日、ミャンマーで国軍のミン・アウン・フライン最高司令官と会談し、協力の強化を確認していた。中国にとって、ミャンマーは中東からの原油パイプラインが通る戦略的要衝だ。民政移管の後退を問題視しない姿勢を示し、国軍との関係を強めていく可能性もある。

2021.02.02 読売新聞朝刊3面

いくらバイデンがお飾りとかパペットとか言われてても、お茶を濁す程度に済ませることにはならないとみえる。

おまけにアメリカは軍事独裁を許さない。

アメリカはCIAを使ってあらゆる国の民主化運動をやらせてた手前、今回の件に介入する可能性は十分にある。しかし、オバマゲート関連の事案を含めたアメリカの国内問題もあるので、経済制裁はあれど、すぐに軍を動かすことはないだろう。

 

次はイギリス。

英・ジョンソン首相、ミャンマーでのクーデター非難

イギリスのジョンソン首相はツイッターで「ミャンマーにおけるクーデターとアウン・サン・スー・チー氏を含む文民の投獄を非難する」とした上で、「選挙の結果は尊重されねばならず、文民の指導者は釈放されなければならない」と求めました。

2021.02.01 Japan News Network

英・ジョンソン首相、ミャンマーでのクーデター非難(TBS系(JNN)) - Yahoo!ニュース

ミャンマー民主化を支援していた手前、こういう声明は出すことは明白だった。

しかし声明止まりになる可能性はある。イギリスもアウン・サン・スー・チー工作員として利用していたフシがあるため、見捨てるというオプションもあるから。

 

続いて中国。

中国外務省「ミャンマーは友好国」 クーデター非難せず

中国外務省の汪文斌副報道局長は1日の記者会見で、ミャンマーで同日起きた国軍のクーデターについて「憲法に基づいて意見の違いを適切に処理し、政治と社会の安定を守るように希望する」と述べた。クーデターを非難せず、静観する姿勢をみせた。汪氏は「中国はミャンマーの友好的な隣国だ」と明言した。

中国はミャンマーとの関係強化を進める。米国との関係が悪化し、中国南部の内陸部からインド洋に通じるルートを提供するミャンマーの重要性が高まっているためだ。

習指導部は政情が不安定なミャンマーの政府や軍の首脳とバランスを取って外交を進めてきた。

2020年1月に習近平(シー・ジンピン)国家主席ミャンマーを訪問した際には事実上の政府トップであるアウン・サン・スー・チー国家顧問兼外相だけでなく、今回のクーデターで全権を掌握したミン・アウン・フライン国軍総司令官とも会談した。

21年1月に王毅(ワン・イー)国務委員兼外相が東南アジア各国訪問の一環としてミャンマーを訪れた際もスー・チー氏、フライン氏とそれぞれ会談した。中国外務省の発表によると、フライン氏は「台湾、香港、新疆ウイグル自治区に関わる問題で、中国の正当な立場を引き続き支持する」と王氏に表明した。フライン氏は、中国が最も重視する「核心的利益」を巡り、中国支持の立場を鮮明にした。

中国が静観姿勢をみせる背景には、クーデター後のミャンマーが欧米の批判を受ければ、一段と中国に接近するとの見立てがありそうだ。ミャンマー国軍は中国の広域経済圏「一帯一路」を巡る構想にもたびたび協力姿勢を示してきた。

2021.02.01 日本経済新聞

中国外務省「ミャンマーは友好国」 クーデター非難せず: 日本経済新聞

中国は静観の見方こそ強いが、東南アジア情勢の不安定化は中国のメリットが1つもない。

(中国にとって東南アジア情勢の不安定化は自分の足元に火がついてるようなもの)

だから安定化のためにどこかのタイミングでどちらかの勢力を軍事的に支援する可能性もある。

しかし人民解放軍派遣はそれを口実にされて、米軍、NATO軍による中国への軍事作戦を誘発しかねない。

そうなると、中国が取れる手段は国連PKO(国際連合平和維持活動のこと)だが、常任理事国のロシア、アメリカが拒否権を行使する可能性があるため、結局秘密裏に動かすしかないか、あるいは本当に何もしないか。

いずれにしてもミャンマー情勢が目まぐるしく動いている上に通信網が分断されているので、今後の動きに警戒する必要がある。

 

その他の国家について。

2月2日の読売新聞の記事には以下のように書かれている。

国連・EUは非難、露 様子見

 ミャンマーで1日発生したクーデターに対し、各国政府が相次いで非難声明や懸念を示す見解を出した。

 インドネシア外務省は「法の順守や民主主義の原則などをうたった東南アジア諸国連合ASEAN)憲章を尊重するよう求める」と国軍をけん制した。シンガポール外務省も「深刻な懸念を表明する」とした。様々な政治体制を抱えるASEANはこれまで加盟国の内政不干渉を重視してきた。今回のクーデターはミャンマーと周辺国の関係に影を落とす可能性もある。

 インド外務省は1日の声明で「深い懸念を持って注視している。法の支配と民主プロセスは守られなければならない」と述べた。オーストラリアのマリーズ・ペイン外相は「違法に拘束した文民指導者を直ちに解放するように国軍に求める」との声明を公表した。

 ドイツのハイコ・マース外相は1日、スー・チー氏らの即時釈放と非常事態宣言の解除、昨年11月の総選挙結果の受け入れを国軍に求めた。フランスのジャンイブ・ルドリアン外相は1日の声明で「フランスは民主主義と自由を望む人々とともにある」などと述べ、スー・チー氏らの即時無条件釈放を求めた。イタリア外務省も即時釈放を求める声明を出した。

 欧州連合EU)のシャルル・ミシェル欧州理事会常任議長はツイッターで「強く非難する」とした。国連のアントニオ・グテレス事務総長は「民主改革への深刻な打撃だ」として、強く非難する声明を報道官を通じて発表した。

 ロシアのドミトリー・ペスコフ大統領報道官は1日、タス通信などに対し「注意深く情報を分析する。まだ評価を下すタイミングではない」と述べた。

2021.02.02 読売新聞朝刊6面

注目すべきなのは他のASEAN諸国とロシアの態度。ASEAN諸国は発言こそすれど内政不干渉。政治体制が全く違う国も多く、自国すらまともに統治統制できない国もあるため。

ロシアは対中戦のこともあるので様子見。他にもPKO派兵に積極的に協力しているインドの態度を注視すべきだろう。

ロシアとインドは反中でまとまってるうえに、双方の利害対立もないから。

 

そして日本の反応。

茂木外相「民主化に重大懸念」

 外務省は1日、ミャンマーアウン・サン・スー・チー国家顧問らが国軍に拘束されたことを受け、「民主化プロセスが損なわれる事態が生じていることに対し、重大な懸念を有している。スー・チー氏を含む関係者の解放を求める」とする茂木外相の談話を発表した。加藤官房長官はこの日の記者会見で、「現地邦人の安全確保に万全を尽くす」と強調した。

2021.02.02 読売新聞朝刊2面

外務省発表の茂木外相による外相談話全文

ミャンマー国内情勢について(外務大臣談話)

  1. 本日(2月1日)、ミャンマーにおいて、緊急事態が宣言され、民主化プロセスが損なわれる事態が生じていることに対し、重大な懸念を有している。また、本日拘束されたアウン・サン・スー・チー国家最高顧問を含む関係者の解放を求める。
  2. 日本政府は、これまで、ミャンマーにおける民主化プロセスを強く支持してきており、これに逆行する動きに反対する。我が国は、ミャンマーにおいて民主的な政治体制が早期に回復されることを、改めて国軍に対し強く求める。
  3. ミャンマー日本大使館を通じ、在留邦人に対して、情報提供、注意喚起の対応を行っているところであり、これまでのところ、在留邦人に被害等が出たとの情報はない。引き続き、ミャンマー側に対しても邦人の安全確保を要請しているところであり、邦人の安全には最大限の注意を払っていく。

2021.02.01 外務省

ミャンマー国内情勢について(外務大臣談話)|外務省

憲法第9条がある限り日本にできることはない。せいぜいこのような外相談話と、進出した日系企業の撤退を言い渡すくらいで、国連PKOが行われても「日本には憲法第9条があり戦争にお金を使うことはできないが、そのかわり戦後秩序の安定や戦災復興などの人道支援名目ならば支援する」としか言えないのである。

 

このミャンマー問題は単なる善悪二元論で片付けられる問題ではない。どちらかが善というわけでもどちらかが悪というわけでもない。

アウン・サン・スー・チー氏にもロヒンギャ問題とか、外国の諜報機関からお金をもらっていたというスキャンダルがあるため。

ひょっとしたら中国、アメリカ、イギリスなどの国家が「てめえらの内政問題くらいてめえらで解決しろ」という建前で無視するか、その逆に3者がそれぞれ積極的に軍事介入するという可能性も否定できない。

「先に動いたほうが負け」か「先手必勝」かという観点からすれば、今の状況は「先に動いたほうが負け」とみえる。

 

世界情勢が激動期にある中でのミャンマーのクーデターが、今後どのような影響を及ぼすかどうかという面で言えば、難しいところである。

ただ、戦争はドンパチやるまでが8割以上であるということは忘れてはいけない。

 

今回は以上。